2SIDES

今回はスウェットの話です。

この画像のスウェットはふたりのパタンナーが作っています。チーム名は”2SIDES”といいます。

わたしと2SIDESは90年代半ばに知り合いました。出会ったのは原宿、当時、裏原宿と呼ばれたエリアです。

 

当時のわたしはセレクトショップに所属していて、彼らはその事務所をシェアしていた生産会社の社員として、オリジナル制作をしてくれていました。

彼らは、たくさんのブランド制作に関わり、当時のムーヴメントの下支えをしてくれた功労者です。

あれから四半世紀が経ち、現在はふたりとも独立して、いまでも洋服制作の裏方として頑張っています。

そんなふたりの格好は今も昔もそれほど変わっていません。

いやいや、これは単純にわたしのイメージで、まぁ、よく言えば時代に左右されない、ブレない感じです。(こんなこと書いたら「違う!」って言い直されちゃいそうですが・・・)

そんなふたりのイメージを端的に表しているのが、クルーネックのスウェットシャツです。

ビンテージとかではなく、現在40、50代の人が若かりし頃に着ていた80年代、90年代に流通していたごくごく普通のスウェットです。

出会った時から、先日一緒に散歩した時も、彼らはそのスウェットを着ていたりします。

 

ある日、わたしはそんな “あのクルーネックスウェット” を2SIDESのふたりに再現して欲しいと頼みました。

それは「おやじの部活動」と称して、再び彼らと会うようになっていた頃です。

その日は2SIDESのひとりと川崎市にある市場で昼ごはんを食べた帰り、眺めの良い公園の丘の上でした。

理由は単純です。ただただ昔に持っていた “あのスウェット” を再び着たくなったからです。

 

いまでは “あのスウェット” はなかなか手に入りません。

現行は全く別シルエットで、洗練されています。

当時のシルエットを求めると古着くらいしかありませんが、いまさら古着を買って着ようとは思いません。

 

そして、かれらの再現力は予想以上でした。

このスウェットを通じて、数十年も普段着として着続けていた彼らの経験をお裾分けしてもらっている感じです。

”復刻”といった有り難い感じもせず、リアルな普段着といった方が正しい気がします。

わたしはファッションとしてデザインされた服や、企画された服を着るより、別の目的をもって作られた服を着るのが好きです。

このスウェットはまさに、わたし好みの佇まいを持っています。

しかし、そのスウェットを実際に着てみると、袖がとんでもなく太くて、かなり攻めたシルエットでした。

「あれ?こんなカタチだったっけ?」・・・そんな感じです。

振り返れば、当時はこんな服ばかりでした。

洋服に合わせて着こなしとか、自分の見せ方を工夫したものです。

これが、洋服本来の楽しみ方だと思います。

 

ぜひとも、十数年前のリアルな挑戦状を(楽しみながら)調理してみてください。

 

 

 

現在はC A Dという設計ソフトで洋服の設計図(パターン)を引く人が多い中、ふたりは手引き(ハンドメイド)のパターンナーです。

DJプレイで「バック トゥ バック」と言うそうですが、2SIDESのふたりは何度も何度も消しゴムと鉛筆で「バック トゥ バック」を行い、でパターンを引き合って今回のスウェットが生まれました。

傍目で見ながら、「飽きないもんだな?」と感心しつつ、結局、4回のサンプルが出来上がり、5回目に製品となりました。

これが出来るまでのふたりの会話はとんちんかんで、「どっちだっていいじゃん」と思う数ミリや上げ下げ、入れ出しをおこなっていました。

それも、いままで依頼されたものしか作って来なかった彼らが、初めて自分達のプロダクトを作る気持ちの爆発のようでした。

さらに、半袖スウェットも制作していますが、これの設計図(パターン)も、何度も何度も書き直して生まれています。

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